目次
①時代と舞台
飛鳥時代、590年代。完成間近の飛鳥寺(あすかでら)の塔を舞台に、百済(くだら)から来た金属工芸の技術者・白昧淳(はくまいじゅん)と、倭人(わじん)の父と渡来人(とらいじん)の母を持つ若い工人・阿古(あこ)の物語です。
②歴史の手がかり
- 鑪盤博士・白昧淳 588年に百済から来た技術者の一人で、『日本書紀』に「鑪盤博士、将徳白昧淳」と名が残ります(「将徳」は百済の位)。塔の頂に立つ金属の飾りの鋳造を担ったと考えられますが、生涯や仕事の詳しいことは何も分かっていません。
- 相輪と露盤 塔の屋根の上に高く立つ金属の柱を「相輪」といい、九輪などを重ねて造ります。その一番下で全体の重みを受け止める箱形の部分が「露盤」です。
- 飛鳥寺の塔 593年に塔の中心となる心柱が立てられ、その礎には仏舎利が納められました。塔は鎌倉時代の初めに落雷で焼失したと伝わり、今は跡だけが残ります。
- 渡来の技と倭の素材 大陸や朝鮮半島の技術は、海を越えるとき、その土地の材料や気候に合わせて少しずつ姿を変えていきました。
③あらすじ
塔の頂に据える青銅の露盤を引き上げる日の夜明け、白昧淳は露盤に一筋の亀裂を見つける。役人は「日は決められている。今日、上げる」と迫る。白昧淳の胸に、百済で若き日に犯した失敗がよみがえる。そこへ弟子の阿古が、師の教えとは違う修理の方法を言い出す。「ここの銅です。ここの炭です。ここの風を受けます」。正午の期限が迫るなか、職人の面目と、海を越えて変わっていく技とのあいだで、白昧淳は決断を迫られる。

