ようやく来たか

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時代と舞台

昭和(しょうわ)15年(1940年)から現代まで。京都の山あいにある貴船(きぶね)神社を舞台に、結婚したばかりの夫婦がお礼参りに訪れた秋の日から、一人の女性が初めてその社を訪れる日までを描く物語です。

②歴史の手がかり

  • 貴船神社 京都市左京区、鴨川の源流にあたる貴船川のほとりに鎮まる神社です。水の神・高龗神(たかおかみのかみ)を祀り、古くから雨乞いや雨止みの祈りが捧げられてきました。本宮・結社(中宮)・奥宮の三つの社からなります。
  • 奥宮と龍穴 奥宮は、貴船神社がはじめに建てられた地とされます。本殿の下には「龍穴」と呼ばれる大きな穴があると伝わり、誰も見てはならないとされています。
  • 縁結びの社 平安時代の歌人・和泉式部が、離れていった夫の心を取り戻そうと貴船に参り、願いがかなったと伝わります。結社は今も縁結びの神として信仰を集めています。
  • 相生の杉 奥宮の参道にある、一つの根から二本の幹が寄り添うように伸びた杉の大木です。樹齢千年ともいわれ、「相生(あいおい)」の名から、夫婦がともに長く生きることの象徴とされてきました。
  • 神の使いとしての鹿 鹿は古くから神の使いと考えられてきました。奈良の春日大社の鹿がよく知られています。
  • 昭和十五年 日中戦争が長引き、翌年には太平洋戦争が始まる年です。戦後の暮らしも、しばらくは苦しいものでした。

③あらすじ

昭和十五年の秋、結婚して間もない夫が「お礼に行きたいところがある」と言い出す。
行き先は京都の山あいの貴船。
結婚する前に一度お参りしたのだという。
何を願ったのかと尋ねても、夫は「もう、かなったことだ」としか言わない。
奥宮へ向かう道の脇には、一本の根から二本の幹が寄り添うように伸びた杉が立っていた。
奥宮の本殿の前で、夫は、この社の下には龍穴があるのだと教えた。
そして境内の木立の間から、一頭の鹿が、逃げるでもなく近づくでもなく、二人をじっと見ていた。
それから長い歳月が流れ、昭和も遠くなったころ、一人の女性が、初めてその社の石段を上る。


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