鐘の底

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時代と舞台

時代は特定されていません。山のふもとの古い寺を舞台に、経を読む声のよく通る若い僧・円秀(えんしゅう)が、一人の老女についた小さな嘘をめぐる物語です。

②歴史の手がかり

  • 命日の読経とお布施 亡くなった人の命日には、寺に読経を頼んで供養するならわしがあります。頼む人は、感謝のしるしとしてお布施を納めます。
  • 梵鐘と撞木 寺の鐘を梵鐘といい、吊るした丸太の撞木で撞きます。時を告げ、勤行の始まりを知らせるほか、その音は仏の教えを遠くまで運び、亡き人の苦しみを和らげるとも言われてきました。
  • 不妄語戒 仏教で守るべきとされる戒めの一つで、嘘をつかないことを説きます。僧にとっては、とりわけ重い戒めでした。
  • 彼岸 春分・秋分の日を中日とする七日間です。先祖を供養する時期で、寺では法要や説法が行われます。
  • 仏教説話 『日本霊異記』や『今昔物語集』などには、僧の過ちやその報いを語る話が数多く収められ、人々に教えを伝えてきました。

③あらすじ

山のふもとの古い寺に、経を読む声のよく通る若い僧・円秀がいた。
ただ、叱られそうになると嘘をつく癖があった。
秋の終わりの雨の夕刻、一人の老女が、幾度も折り直した紙包みを差し出す。
「亡くなった主人のために、お経をお願いしたいのですが」。
円秀は鐘を撞いて本堂へ戻る。
だが雨で冷えた手を火鉢にかざすうち、経本を閉じてしまう。
翌朝、老女は晴れやかな顔で礼を言いに来た。
「鐘の音が、よう聞こえました」。
円秀は答える。
「はい。心を込めてお経をあげました」。


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