目次
①時代と舞台
飛鳥時代、天武天皇(てんむてんのう)元年(672年)の壬申の乱(じんしんのらん)。わずかな手勢(てぜい)で飛鳥を押さえ、大和(やまと)の戦いを率いた大伴吹負(おおとものふけい)の物語です。
②歴史の手がかり
- 壬申の乱 天智天皇の死後、その子・大友皇子(近江方)と、天皇の弟・大海人皇子が皇位を争った古代最大の内乱です。大海人皇子が勝ち、天武天皇となりました。
- 大伴吹負 名門大伴氏の一人です。兄の馬来田が大海人皇子のもとへ走ったのに対し、吹負は飛鳥に残って挙兵し、近江方の陣営を奪いました。
- 飛鳥寺の西の槻の木 飛鳥寺の西には大きな槻(ケヤキ)の木の広場があり、儀式や集会の場とされていました。乱のとき、ここに近江方の軍営が置かれていました。
- 偽りの到着 吹負は、大海人皇子の子・高市皇子が大軍を率いて到着したと叫ばせ、近江方の兵を混乱させて陣を奪いました。
- 乃楽山の敗北と墨坂の援軍 吹負は奈良山(乃楽山)で近江軍に敗れて敗走しましたが、東から急行した置始連菟の援軍と墨坂で合流し、立て直しました。
③あらすじ
小墾田の武器庫から、弓と矢が近江へ運ばれていく。
道端に伏せ、それを黙って数える大伴吹負。
兄は大海人皇子を追って東へ去り、手元にいるのは数十人にすぎない。
「兵が欲しい」「どこにいる」「敵の陣にいる」。
吹負は一つの偽りで飛鳥を奪う。
だが偽りは二度は効かない。
乃楽山で敗れ、楯を差し出してくれた名も知らぬ兵を失った男は、やがて自らの戦いを家の記録に語ることになる。

