産屋の灯

目次

①時代と舞台

江戸時代後期、天保(てんぽう)7年(1836年)の大飢饉(だいききん)の夏。備中(びっちゅう)・吉備の中山(きびのなかやま)のふもとの村(いまの岡山市)を舞台に、十二年ぶりに故郷へ戻った産婆(さんば)・美緒(みお)が、消えた少年と、二十年前に消えた妹の行方を追う物語です。

②歴史の手がかり

  • 天保の大飢饉 天保4年(1833年)ごろから続いた冷害と凶作で、全国で多くの人が飢えて亡くなりました。天保7年は特に冷夏がひどく、各地で一揆や打ちこわしが起きています。
  • 年季奉公と証文 貧しい家の子どもは、商家などへ働きに出されました。働く年数(年季)や条件は証文に書かれましたが、実際には前借りした金と引きかえの身売り同然の奉公も少なくありませんでした。字の読めない親が、中身を知らずに判を押すこともありました。
  • 口入れ屋 奉公先を世話する仲介業者です。
  • 産婆 子を取り上げる女性です。村の出産を見守り、生まれた子のことを誰よりよく知る存在でした。
  • 吉備の中山 岡山市の吉備津神社・吉備津彦神社の背後にある山で、古くから信仰の山とされてきました。

③あらすじ

冷たい雨の降りやまない天保七年の夏。
十歳の蓮は、田の泥の中から子どもの乳歯を拾い上げる。
それを紙に包んで持ち去ったのは、山裾に住む薬売りの女・加里だった。
その夜、蓮の家に口入れ屋が奉公の証文を持ってくる。
「わしを売るんか」。
翌朝、蓮は消えた。
同じ朝、母の病を知って十二年ぶりに村へ戻った産婆の美緒は、加里の小屋で、子どもたちの名と身体の特徴と金額を記した帳面を見つける。
そして母の布団の下からは、二十年前に消えた妹の名を書いた木札が落ちる。


← 作品一覧へ戻る

作品をシェアする
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次