目次
①時代と舞台
平安時代の終わり。後白河上皇(ごしらかわじょうこう)と平滋子(たいらのしげこ)のあいだに生まれ、八歳で即位(そくい)した高倉天皇(たかくらてんのう)――名は憲仁(のりひと)――の、二十一年の生涯を描く物語です。
②歴史の手がかり
- 高倉天皇(1161〜1181) 名は憲仁。父は後白河上皇、母は平清盛の妻・時子の妹にあたる平滋子(建春門院)です。仁安3年(1168年)、八歳で即位しました。
- 平清盛と中宮徳子 清盛の娘・徳子(のちの建礼門院)が中宮となり、皇子・言仁(のちの安徳天皇)を産みました。天皇家と平家の結びつきが強まる一方、後白河院と清盛の対立は深まっていきました。
- 小督 高倉天皇に愛された琴の名手です。清盛の怒りを恐れて宮中を去り、嵯峨に隠れたという話が『平家物語』に語られています。
- 治承三年の政変(1179年) 清盛が兵を率いて京へ入り、後白河法皇を鳥羽殿に幽閉した事件です。翌年、高倉天皇は三歳の言仁に譲位し、厳島神社へ参詣しました。
- 源平の争乱の始まり 1180年、以仁王が平家打倒の兵を挙げて敗死し、各地で源氏が立ち上がりました。同じ年、都は一時福原(いまの神戸)へ移され、暮れには平家の軍が奈良の東大寺・興福寺を焼きました(南都焼討)。高倉上皇はその翌月、二十一歳で亡くなります。
③あらすじ
庭に降りた小鳥を見に行こうとすると、「主上」と呼び止められる。
八歳で帝となった憲仁を名で呼ぶのは、母・滋子だけだった。
その母は病に倒れ、「帝とは何なのです」と問う息子に「それは、あなたが考えることです」と言い残して世を去る。
清盛の娘・徳子との結婚、琴の音とともに消えた小督、父・後白河と舅・清盛のあいだで引き裂かれていく日々。
誰もが「主上」と呼ぶなかで、一人の若者は、自分の名を呼ぶ声を探し続ける。

