鬼姫生

目次

①時代と舞台

昔の美濃(みの)の山あいの村から、その村がダムの底に沈むまで。岐阜県の揖斐川(いびがわ)上流、横山ダムの湖底(こてい)に眠る谷を舞台にした、鬼と呼ばれた女・きぬの物語です。

②歴史の手がかり

  • 横山ダム 岐阜県揖斐郡揖斐川町、揖斐川の上流に1964年に完成したダムです。洪水を防ぎ、電気を起こすために造られました。昭和の高度経済成長期には各地でダムが造られ、多くの山村が湖の底に沈み、住民は故郷を離れました。
  • 「鬼」と呼ばれた人々 山奥に一人で暮らす女や、村の外れにいる者は、しばしば「鬼」や「山姥」として語られてきました。民俗学では、共同体からはみ出した人が「鬼」と呼ばれた例が数多く指摘されています。
  • 龍と川の神 川や淵には龍や大蛇が棲むとされ、水の神として祀られてきました。
  • 地名に残る伝承 不気味な響きの地名の裏に、まったく別の物語が隠れていることがあります。

③あらすじ

ダム湖の底に沈んだ村、鬼姫生。
その名は、子どもをさらい人を食った鬼女の伝説から来たと言われる。
けれど村の古老は「あの人は、人を食うたんやない」と言いかけて、口を閉じた。
村の娘・きぬは、春には戻ると約束した男に裏切られ、赤い袴を着て山の奥へ消える。
「鬼がおる」という噂が勝手に育つなか、ある嵐の夜、濁流の岩にしがみつく村の子が叫ぶ。
「助けて」。
そして子どもは、きぬを見て言う。「鬼……」。


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